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暗室の椅子

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 診察室の一画には「暗室」と書かれた開かずの小部屋があった。古い写真に写った看板によると昔は眼科もやっていたようなので、眼科診察に使われたのだろう。力任せに扉をこじ開けると、壁は黒く塗られ天井には赤色灯がついた本格的な暗室で、中には椅子やオイルランプがあった。
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 中から出てきたこの椅子は、患者さんを座らせるにしては、ずいぶん仰々しい。不思議なことに、この病院で見つかったのは、木の簡単なスツール以外ではこれが唯一の椅子だった。開けることができなかったために、曽祖父の時代からそのまま残っていたのではないだろうか。曽祖父の写真の中には、たしかこれに似た椅子に手を置いた軍服の写真があった。

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 さすがにこれは素人の私には修復は困難、と思ったので、プロに頼んで修復してもらった。椅子の脚に板がついているのは、畳の上で椅子を使うことが多かった時代に、畳を傷めないために工夫されたものだそうだ。使用されている木が変わったものらしく、この椅子が純粋な日本製なのか、舶来ものに手を加えたものなのかは判断が難しい、と言われた。
 張り替えた布は私が持っていたもの。ずいぶん派手な生地だが、トロピカルな要素が加わって、南国熊野に合っている、と自分としては満足している。曽祖父が見たら一言文句をいわれそうではあるが、、、。
 

 
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by mobiliantichi | 2008-06-20 08:23 | 古民家修復  

処置机

 祖父の診察室に残っていた机には、天板に表面のつるつるした紙が貼られていた。耳鼻科だった祖父は、この上でいろいろな処置の準備をしていたのだろう。ほとんどの家具はA氏に引き取ってもらったのだが、同じ物が2つあったこの机は、1つ残して自分で修復することにした。
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d0147727_7533316.jpg 修復はまず、師匠の店の庭先で始まった。べったり貼りついた紙を剥がしたあとは、天板に残った接着剤をお湯やら洗剤やらでひたすらこそげ落とす。水を使った外での作業にしもやけを心配する。そして1日目が終了。
 数日後に乾いた天板を見ると、沢山の輪染みや焼け焦げがある。今度は白蝋病を心配しつつ、サンダーでひたすら削る。サンダーのスイッチを切っても、手が振動しているような感じになる。そして2日目も終了。
 次はばらばらに分解して組み直し。今までやった英国のアンティーク家具とのいろいろな違いを見ることができた。日本人はやっぱり几帳面で四角四面だった。

 仕上げは天板のシェラックとワックス塗り。なんだか自分でも惚れ惚れするピカピカな天板になった。細かなところを見てみると木目が美しい。天板に使われている木の幅も太くて、大きい木が使われたことがわかる。
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 d0147727_8304844.jpg 普段はテーブルクロスをかけて日焼けを防いで、これぞ、というお客さんが来た時には、クロスをめくって、実はこの机はこれこれしかじかで、、、、と自慢話を始める。本当はこれが楽しくて、修復作業をしているのかもしれない。我ながら嫌味な性格の人間だと思うが、やめられない。熊野には、こんな自慢話を聞かされるのは覚悟して来てください。お待ちしています。

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by mobiliantichi | 2008-06-17 09:03 | 古民家修復  

朝食用のテーブル

子供のころ我家の朝食は決まっていた。父はトーストにバターとマーマレードか蜂蜜、スライスしたトマト、半熟のゆで卵。飲み物はレモンティー。私はバターロールにイチゴジャム。ゆで卵は朝に食べると胸焼けするので苦手だった。よく日本の朝ごはんの象徴といわれるるお味噌汁を朝食に食べた記憶はない。(夏休みを過ごした熊野では、記憶に残る朝食は茶粥である。)
 今、熊野での朝食はだんぜんこの台所のテーブルで食べたい。
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 台所には大きなテーブルが欲しい。盛り付けの時にはお皿を並べ、片付けの時には布巾を敷いて濡れたグラスを並べる。天板は水拭きができて、その上で直接手打ちパスタがこねられたら文句なし。そして朝食はクロスかマットを敷いてそこで食べたい。そんなわがままな要求を満たしてくれそうなテーブルにはM氏の店で出会った。天板は使った後にはサラダオイルを塗りこんでおくと、いい色になってくるらしい。
 しかしこのテーブル、少し下の方が黒過ぎる気がした。そこで師匠に、「色を薄くしたい」と相談すると、「アルコールで拭けばいい」と言われた。雑巾をアルコールに浸していくら拭いても全く変化なし。そこでスチールウールにアルコールを付けて2時間くらいひたすらこすったら、やっと左下の写真のようになった。そしてめげた。
 数ヶ月後にM氏にその話をしたら、特製のドレッシングを分けてくれた。そしてまた熊野での脱色作戦を開始。アルコールより少しは早いかもしれないが、右下の写真のようになったところで、やっぱりギブアップ。テーブルには脚が4本もあるというのに。
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 天板がいい感じのあめ色になる頃までには全部の脚をこんな色にしたい。手をかけた家具は愛着もひとしお。名前でもつけようか。このままのスピードで行けば、脚の周りに座り込んで、テーブルの名前を呼びながら、もくもくと脚をなでている怪しい老婦人になりそうだ。
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by mobiliantichi | 2008-05-21 22:55 | アンティーク  

超高級椅子

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 はじめて修復した椅子である。修復講座を一緒に受講した友人と実習教材を探して、師匠の友人のM氏のお店に行き購入した。M氏は私がこれを修復実習に選んだところ、その場で師匠に電話して何やらグヂャグヂャ言っていた。そこで気付けばよかった。
 修復はまず全てをバラバラにするところから始まる。接合部の近くをショックハンマーで叩くと、少しずつ抜けてくるはずがビクともしない。もしかして私は非力な乙女なのか?実はこの椅子は今まで何度か修復されて使い続けられていて、その修復のいずれかの時期に釘を使った簡易的は補修がされていたのだ。釘を抜いてから叩くと、面白いようにバラバラになった。

 
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 次の作業は接合部に残った膠を除去すること。師匠お勧めのスチーマーで融かしていたら、ボキッ!折れた。師匠の顔は心なしかにやついて嬉しそうだ。「やってしまいましたねえ」 実習は規定時間内に終了しないと追加料金が発生する。師匠の微笑みの理由はこれか。この椅子はマホガニー製だそうで継ぎ足した材にも貴重なマホガニーを使わせていただいた。ノミやカッターで削ったがこれがとっても硬い。やっぱり私は非力な乙女に違いない。


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 座面の布は破けていたため新しい布に張替えた。中には馬の毛が入っていたので洗って、干して綿を足して布を張る。この座面張りの作業も山ほどの釘を抜いて山ほどの釘を打ち込んだ。「下手に打つと座った時にお尻に釘が刺さりますよ」「えっ!!」さすがにこれは冗談だった。どうも師匠に遊ばれている。


 実習の最終日には中学生のお嬢さんを連れた友人が激励に駆けつけてくれたので、スリムなお嬢さんにこの椅子に初めて座ってもらった。大丈夫だ。そしてそのすぐ後、大きな師匠がどっかと腰を下ろした。その瞬間たぶん声に出して「あっ!」と叫んでしまったに違いない。師匠は笑って、全然問題ないと言うような顔をした。 
 結局、修復実習は計算出来ないほど時間超過をしたので、師匠のお店で家具を購入して追加料金を少しおまけしてもらった。
 そう修復作品第1号の椅子は、時間も体力もお金も注ぎ込んだ超バブリーな椅子なのだ。
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by mobiliantichi | 2008-02-27 22:05 | アンティーク  

出会いは最悪

 ある日溜池山王の地下鉄改札横の小さな本屋で
「ほんもの」のアンティーク家具 
という新書を見つけた。本を購入してアンティーク好きの友人にも紹介した。彼女がHPで著者の店を調べたところ、修復講座をしている、という。海外暮らしが長く、アンティーク好きな彼女の家には沢山の修復の必要な家具があった。
 はじめてそのアンティークショップに彼女と訪れた時、まさかこんな長い付きあいになるとは思っていなかった。本の著者で店主のS氏は他のお客さんと仏教音楽について語っていた。お店の中を一通り物色した私達はおそるおそる「修復講座を受講したいのですが、少し暖かくなった春くらいに」と声をかけた。詳細を説明した後、店主は言った。「冬の講座がこれで人数が揃いましたからやりますよ。春は開催するかわかりません。丁度同世代50代の女性の方達ですから」私達はその瞬間、二度とこの店には来るまいと思った。決して決して私たちはまだ50代には見えないはず。
 しかし結局は「修復講座を受講した方はイギリス買い付けツアーに同行できます」という文言に惹かれて、寒い冬の修復講座に参加した。初日は雪。八王子のS氏の店は都心より数度は気温が低い。それに店は大正時代の工場を修復した物。その店でアラジンのストーブを囲んでの修復講座が始まった。確か開催人数は6名からのはず。でもなぜか生徒は私たち2名だけ。他の皆さんは直前キャンセルされたそうで。 なんだかはめられた気がした。でもそのおかげで好きな時間に講習を受けることができた。
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 そしてそのS氏がブログに登場する師匠
である。

 そしてまだ買い付けツアーは実行されていない。

 そしてこれが私の初 修復作品。この苦労話はまたいつか、、、。
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by mobiliantichi | 2008-01-30 21:50 | 古民家修復