熊野自慢 その20 「リサイクル天体望遠鏡」
一見地味な建物。熊野市の隣、新宮の普通の住宅街にある。
近くには国道、さらに最近ではバイパスもできた。
雨の昼下がりに、父の旧制中学の同窓生T氏の住むこの場所を訪れた。T氏はレンズを磨かせたら、その道ではとっても有名な方らしい。
そしてT氏は道路が新しくなったことを喜んではいなかった。
なぜならこの家にあるのは、、、、。
40年前、個人で作った天体望遠鏡。材料はほとんどがリサイクル。車のボンネット、鉄塔の一部、それに鍋の蓋まで使われている。当時はリサイクルなんて言葉も一般的ではなかったはず。
この望遠鏡には沢山の匠の業が詰まっている。
設計して、実際にこれを使っているT氏は、「オタクじゃなきゃ、こんなことやってませんよ」とおっしゃる。40年たって、錆もめだち、老朽化してきた望遠鏡を最近1か月かかって、錆を落としペンキを塗り直したという。T氏のお話が面白い。
T氏によると、部品を溶接したのはなんと戦艦大和の修理工だった方。ガス溶接という技で、バーナー一本でねじの穴とかもすいすい開けていったという。なんでもその溶接工は、武蔵が沈むのを眼のあたりにして、こんな船に乗ってたら先がないと考えて、体調もすぐれないからと大和を下させて貰っい命拾いしたらしい。
竹下登が地方にお金をばらまいた時、多くの自治体が天体望遠鏡を作った。だからこの手の望遠鏡の数は日本が世界一多いらしい。
T氏の口からは、こんな話がポンポン飛び出す。
もうすぐ80歳とは思えない若々しさ。ボタンダウンにジーンズ姿がお似合いだ。
オタクもここまでくれば頼もしい。
ところで皆さん、どこにお鍋の蓋が使われているか、わかりましたか?
実は私、夜空の星はオリオン座と北斗七星くらいしか知らない。
次回、晴天の夜にお邪魔するまでに、ちょっとは勉強しておかないと。
by mobiliantichi | 2009-05-11 21:28 | 熊野自慢