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思い出の甘味 その2: 小川軒のレーズンウィッチ

実はタクシー運転手の知人はその仕事を生かして、もう一つお土産をくれた。
小川軒のレーズンウィッチ。
バターの香りの効いた香ばしいサブレにラム酒に漬けたレーズンとクリーム。
今でこそデパートでも扱っているが、昔は予約なしでは買えない品だった。
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 規律の厳しい田園調布の中学校に通う私達は、学校帰りに立ち寄ることができる店は本屋と文房具屋だけ。もちろん規則は破られるもの、でも自由が丘では近すぎて先生に見つかってしまう。渋谷はちょっと怖いし、原宿はもっと恐ろしかった。(当時から奇怪な衣装の高校生の溜まり場だった)
そこで、私達が目をつけたのは、代官山。
まず、ヒルサイドテラスに行く。トムズサンドウィッチは高いから我慢して、スウィートリトルスタジオでお気に入りの可愛いペンギンのロゴの雑貨を眺める。いつかはトレーナーを買いたいと思いながら。それから何もない道を渋谷方面に歩くと、はらっぱAがある。新しい駄菓子屋で、女の子の好きそうなジャラジャラした小物がある。口に入れるとパチパチはじけるキャンディーをなめながら、小川軒を目指す。小学生のくせに盆栽が趣味の友人の弟が、どうしてもレーズンウィッチが食べたいと言っているから。
由緒正しいフランス料理店の小川軒に、セーラー服で入るのはかなりの勇気が要った。でも、予約をしてないということで、結局売っては貰えなかった。
友人と二人、今と違って店もない、人もいない夕暮れの静かな通りを、小さな代官山駅までとぼとぼ帰った。
だから小川軒のレーズンウィッチは、ちょっと寂しい残念な思い出の味がする。

by mobiliantichi | 2008-10-30 17:30 | 食べ物  

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