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暗室の椅子

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 診察室の一画には「暗室」と書かれた開かずの小部屋があった。古い写真に写った看板によると昔は眼科もやっていたようなので、眼科診察に使われたのだろう。力任せに扉をこじ開けると、壁は黒く塗られ天井には赤色灯がついた本格的な暗室で、中には椅子やオイルランプがあった。
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 中から出てきたこの椅子は、患者さんを座らせるにしては、ずいぶん仰々しい。不思議なことに、この病院で見つかったのは、木の簡単なスツール以外ではこれが唯一の椅子だった。開けることができなかったために、曽祖父の時代からそのまま残っていたのではないだろうか。曽祖父の写真の中には、たしかこれに似た椅子に手を置いた軍服の写真があった。

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 さすがにこれは素人の私には修復は困難、と思ったので、プロに頼んで修復してもらった。椅子の脚に板がついているのは、畳の上で椅子を使うことが多かった時代に、畳を傷めないために工夫されたものだそうだ。使用されている木が変わったものらしく、この椅子が純粋な日本製なのか、舶来ものに手を加えたものなのかは判断が難しい、と言われた。
 張り替えた布は私が持っていたもの。ずいぶん派手な生地だが、トロピカルな要素が加わって、南国熊野に合っている、と自分としては満足している。曽祖父が見たら一言文句をいわれそうではあるが、、、。
 

 

by mobiliantichi | 2008-06-20 08:23 | 古民家修復  

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