ケチのついた家具
天板がとっても美しい。私はそう思って、アンティーク家具を買い始めた初期にこの家具を買った。とっても重いし、天板には傾斜があるので、全く実用的ではない。でも東京のマンションで、このサイドテーブルは、存在感抜群だった。
ある晩、確かに音を聞いた。寝ぼけていた私は、その恐ろしい音の原因を追及せずに、忘れていた。しばらくして、今度は掃除をしていたら、細かい木くずがはらはらと舞った。
家具の下にもぐって、見てみると、虫穴もあるし、何となくひび割れが増えているように思えた。購入した店に連絡すると、一度ひき取って防虫をやりなおすという。長期間、殺虫剤をたいた密封された空間の中に置いておかれたテーブルは、半年以上して、我が家に戻ってきた。私の脳裏には、なんだか農薬に漬けこまれて、光り輝くようにワックスを塗りたくられたレモンが浮かんだ。
数年後、口の悪い師匠は、この家具を見て言った。
「たぶんこれは作業台かなにかだった天板を使って、後で作りなおしてますね。バランスが悪い。それに虫を殺すには、1つ1つの虫穴に直接殺虫剤を吹きいれないと、、、。家具は乾燥や湿気でひび割れる時、凄い音を出す、、etc、、。」
何となくケチのついてしまったこの家具は、ほとんどのアンティーク家具が熊野に運ばれたにも関わらず、今も東京のマンションに置かれている。
とてつもなく分厚い天板の重さに、虫食い穴にひび割れのできた脚が耐えられなくなって崩壊したら、この天板を使って、自分で何かを作ってみよう。
by mobiliantichi | 2010-07-30 20:06 | アンティーク